本会について - 趣意書

日本法医画像研究会 趣意書
1) 法医画像(forensic radiology and imaging)とは

法医画像(forensic radiology and imaging)とは,「法医学(Forensic medicine/Legal medicine)」と「画像(Radiology and Imaging)」を組み合わせた言葉です.まずは,「法医学」そのものについても,一般的には,馴染みの薄い分野であると思われます.多くの方には,法医学は死体だけを扱う学問だとの誤解もあるようです.日本法医学会によると,「法医学とは医学的解明助言を必要とする法律上の案件,事項について,科学的で公正な医学的判断を下すことによって,個人の基本的人権の擁護,社会の安全,福祉の維持に寄与することを目的とする医学である.(1982年 日本法医学会教育委員会報告)」と定義されています.この定義には「死」という言葉が入っておりません.これは,法医学が死体のみを対象とした分野では無いことを示しています.「人の死」は,死因を巡って,死者の周辺の生きている方々の権利に関わる法律上の事項が,発生するので,法医学における実務の多くを占めています.一方,生体に関しても,虐待や暴力などについて法医学的に判断する必要があり,この分野を特に臨床法医学と呼びます.しかしながら,我が国ではあまり実績が無く,多くは一般臨床医がその判断を行っている現実があります.
次に,「法医画像」ですが,前述のような法医学的判断を行う際に,単純X線写真やCT,超音波,MRIなど主として医療で使用されている画像診断の技術をどの様に応用できるかを研究する,法医学の一分野です.近年,普及が進みました死後画像については,ご存じの方も居られることと思います.死因究明の一助となる死後画像は,法医画像の一部と言えます.「法医画像」という言葉では聞いたことがあまりないため,最近の概念と思われがちですが,実は古くから存在しておりました.レントゲン博士が1895年にX線を発見し,はじめて単純X線写真が撮影された翌1896年には,女優の出演中の足部脱臼が裁判となり,足部の画像による判断がされました.また,放射線障害が医療裁判となり,裁判でその画像が用いられました.刑事裁判でも,被疑者自殺の殺人未遂事件で銃弾の捜査および確認に画像が用いられました.このように,X線発見の翌年から法医画像の始まりと言われる事案が発生しています.
近年,法医学講座に専用CT装置を設置する大学が増加し,法医解剖の前に画像を撮影・読影し,解剖の補助診断としての有用性が検討され議論されています.死後画像のみですべてがわかる訳ではありません.死後画像でわかる情報には限りがあり,例えば,薬物中毒であることは分かりませんし,損傷の受傷時期(生前に生じたのか,それとも死後に生じたのか)が判断できない場合も多々あります.ですから,解剖が不要になる訳ではありません.また,前述の通り,法医学は死体だけではなく生体をも対象とした学術分野であるので,生体画像についても法医学的な視点で読影を行う必要があります.臨床医が,診断治療を目的として読影するのと異なり,損傷部位について成傷機転や成傷器の推定など,臨床医学と異なる視点で考察します.

2)法医画像研究会

私たちは,このような「法医画像」を,学術分野・実践医学分野として啓発・発展させるため,2011年8月に第1回法医画像勉強会を実施しました.その後,年2回の勉強会では,参加者も徐々に増加しております.そして,より充実した活動を目指して,2014年より「日本法医画像研究会」として活動していく事になりました.勉強会等の活動を通じて,臨床・研究各分野での今後の更なる発展を目指しています.

3)法医画像勉強会

法医画像という分野で,生体画像/死後画像を法医学的視点で扱う勉強会はこれまでに無く,系統的に学ぶ機会もありませんでした.そこで,様々な臨床分野の先生方からその分野の専門知識を学ぶ場として,また,この分野に携わる者同士の知識交流の場として,法医画像勉強会を開催しております.そのため,当初から,臨床の先生に教育講演をして頂くプログラムを多く企画してきました.これまでには,放射線科,整形外科,脳神経外科,小児科と言った臨床分野に,病理学を含め幅広い分野の先生方に大変貴重な講演をして頂きました.それと同時に,参加された臨床分野の先生方に,法医学を理解して頂く機会にもなっています.また,症例報告や研究発表も行っており,読影・診断力の向上が期待できます.このように,これまで法医学とあまり関わりがなかった診療科の先生から新しい知識を吸収しながら,お互い議論し,意見交換を通して交流し,法医画像の分野を発展させるべきであると考えております.日本法医画像研究会として,年2回(3月/9月)の勉強会を実施しています.